名刹古寺の塔

彼岸を求めて 慈眼院住職 南 揚道
 百年前、ニーチェは「善悪の彼岸」を世に問い、新しい哲学の役割を模索した。 彼は現代文明の過ちを認識し、現代の理性が人間存在という生命存在に対して無能であること、即ち、あまりにも合理化された意識は、内在する矛盾や対立する両極の自己同一への統一が不可能であることに気づいた。

 そこで、生命存在を危険にさらす現代という腐敗を救うには、幸いに自己の理性に内在する高貴性の希求によって、自己否定、現実否定の実践に糸口が求められるとした。今仮りに、自己という固体で考えると、崇高なものを理想し、高貴な精神を自覚すべく今の自己を否定する実践行があって、即ち僧は僧として、経営者は経営者としての行為を実践するわけである。

「この世の中から立ち去る人々は、蠕虫、昆虫、獅子、猪、蛇、虎、人間その他のものとして、それぞれの境位に再生する」(『カウシータキー・ウパニシャッド』)。これは、万物同質の生命観をもつインド古代の認識である。

 中国思想を覗いてみると、たとえば、最も系統的、統一的な朱子などは五行説をもって、人間の本性が自然の根源である理であるという立場にたって、理に対する敬意を持って生活を律することで、天地自然と人間を合一させようとしている。

 「地水火風空の五大に、みなひびきあり、十界に言語を具す。六鹿ことごとく文字なり。法身はこれ実相なり」(『声字実相義』)。発音・表記のみがことばでなく、一切の現象が言語であり、宇宙の意を表すという。「名の根本は法身を根源となす。彼より流出してようやく転じて世流布の言となるのみ。若し、実践を知るをばすなわち真言と名づけ…」

 動物・植物・大地・大気全ての万物と交合する方向に、高貴性・崇高性を評価する実践が、彼岸への糸口である。

仏塔古寺十八尊霊場会指定軸
仏塔古寺十八尊霊場会指定軸
(満願)
・第十八番 五秘密菩薩 室生寺(奈良県)
・第十七番 金剛薩 神呪寺(兵庫県)
・第十六番 虚空蔵菩薩 鏑射寺(兵庫県)
・第十五番 愛染明王 宝山寺(奈良県)
・第十四番 般若菩薩 千光寺(奈良県)
・第十三番 大日如来(胎蔵界) 観心寺(大阪府)
・第十二番 大日如来(金剛界) 慈眼院(大阪府)
・第十一番 阿 如来 金剛三昧院(和歌山県)
・第十番 阿弥陀如来 浄瑠璃寺(京都府)
・第九番 勢至菩薩 久米寺(奈良県)
・第八番 観音菩薩 當麻寺西南院(奈良県)
・第七番 薬師如来 神護寺(京都府)
・第六番 弥勒菩薩 慈尊院(和歌山県)
・第五番 地蔵菩薩 霊山寺(奈良県)
・第四番 普賢菩薩 岩船寺(京都府)
・第三番 文殊菩薩 海住山寺(京都府)
・第二番 釈迦如来 叡福寺(大阪府)
・第一番 不動明王 家原寺(大阪府)


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